水戸地方裁判所 昭和55年(む)199号 決定 1980年4月17日
主文
本件申立はこれを棄却する。
理由
本件準抗告の申立の趣旨及び理由は、弁護人茂木博男作成の昭和五五年四月一六日付準抗告申立書に記載したとおりであるからこれを引用する。
そこで判断するに、当裁判所における事実取調の結果によると、被告人は、昭和五五年三月一五日収賄被告事件について勾留のまま起訴され、同年四月七日別件の収賄被告事件について追起訴され、更にその後余罪である別件の収賄被疑事実に基づき逮捕され、同月一〇日勾留されて現に拘留中のものであるが、水戸地方検察庁検察官小川修は、同月一六日別紙指定書記載のとおり接見等に関する指定をなしたこと、が認められる。
ところで、本件のように、同一人について被告事件の勾留とその余罪である被疑事件の逮捕、勾留が競合する場合、なお検察官等に接見指定権を認めるべきかどうかについては争いがあるところ、これを肯定するとなると、これが弁護人(弁護人となろうとする者についても同じ)と被告人との間の接見交通権に対する重大な制約となるものであることは所論のとおりである。しかし、そうかといつて、被告人が一旦公訴を提起され、被告人としての立場に立たされた以上、その後はいかなる余罪が生じ、捜査の必要が生じようとも、検察官等の接見指定権を一切認めないとするのも、行き過ぎであると思われる(事件単位に考え、余罪についてのみ接見指定権を認めようという考え方もあるが、現実的ではない)。ここは検察官等にその接見指定権を認めたうえ、当該被告事件の訴訟の進行状況(既に第一回公判期日が指定されているかどうか、それが近接した時期にあるかどうか、現に公判審理中のものであるかどうかなど)、事案の軽重、それまでの接見状況、被疑事件の重大性など具体的な場合、状況に応じ、接見時間の大幅な緩和など特段の配慮をなすことによつて、被告人の防禦権と余罪捜査の必要性との調和を図るのが相当であると考える。(いずれにせよ、接見交通の問題は、迅速処理が要求されるものであり、検察官・弁護人の相互信頼のもとに、自主的に処理されることが望ましい)。
そうであれば、本件の場合検察官に接見指定権が全くないとして、その具体的指定の取消等を求める弁護人の申立は、いずれも理由がなく棄却を免れないものといわなければならない。なお、弁護人は、本件においては、検察官の接見指定権の有無の判断のみを求めているので、ここではその具体的な指定内容の当否の判断には立ち入らない。
よつて、刑訴法四三二条、四二六条一項を適用して、主文のとおり決定する。
(別紙)
<省略>